終の住処で、広がりを愉しむ暮らし。
ここは、終の住処(ついのすみか)です。 六十代をむかえ、年齢に相応しい空間で、本当に必要な物だけを残したシンプルな暮らしがしたいと思いました。 夫婦それぞれの部屋は、平屋の端と端へ離して配置していただきました。主人と私(奥さん)で、生活リズムが違うんです。私は就寝が早め。主人は夜に映画を見たりする時間を楽しみたいタイプ。前の家では映画や遅くの入浴・イビキなど、とにかく音と気配が気になって睡眠にさしさわっていました。部屋と動線をしっかり区分してもらい、主人は夜の趣味の時間を満喫でき、私は気兼ねなく朝の家事ができるようになった。それぞれの生活がしっかり確保されて、共同生活がより良くなったと実感しています。 リビングのテーブルにつくと、春は勝手口から山桜がよく見えるんです。毎朝洗濯物を干しにデッキへ出ると、海が見えます。建物の高さ感覚がなかったから、家の中からこんな景色が見えるなんて、住むまで思ってもみませんでした。夏はキッチンで夕飯を作る時間、正面に夕日が沈みます。あんまりキレイで、しばし手を止めて見送ったり……。日常的に季節の眺めが楽しめるのは、最高ですね。 土地は一緒に探してもらいました。中村さんが「ここが一番、良いと思う」って仰るんです。見て回った中で、たしかにここが一番、空が近いような感じがしました。ここは当初から、なだらかに傾斜があって芝生に覆われていました。「擁壁でガチガチに地面を作るような家づくりじゃなく、この優しい地形にそのまま家を乗せたいねぇ」と、中村さんから提案があって、それはもうまったく私たちの希望とぴったりでした。 平屋なんですけど、床下の基礎部分に高さがあるので、景色は2階相当からの眺めになります。見晴らしがいいし、通りからの人目は気にならない。こういう床下の高い平屋は私たちの引き出しにはありませんから、この暮らし方は中村さんからのギフトです。四季を過ごしてみて、土地も家もしっくりきています。夜にお風呂で足を伸ばして湯船につかると「はぁ、しあわせ…」ってため息がでるんです。二十四時間が、本当に充実しています。
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